六韜 二巡目 『 目指すは簒奪併呑』 第29回 「武韜10、文伐篇4、敵を自滅させる手法11、12」


六韜の二巡目、始めました。
まずは現在は二つ目の武韜に入っております。

『六韜』二巡目
29回
武韜10 文伐篇4


今回も文伐篇の続きとなります。
直接の武力に寄らぬ手法で敵国を内部から崩壊させる「文伐」。
同篇内で紹介されている12の手法たる文伐十二節、
大まかに言えば、
暴走誘発、ハニトラ、買収、裏切り助長、
の4分類・・・。

今回は十二節の最後、
十一と十二の節の紹介。
内容はこれまでの節とかぶりまくりで、
敵国内の浸透の最終段階、
併呑に向けて敵国の王と臣下の切り離し。

文伐篇4 第十一節 ・・・
・・・・・・
これを塞(ふさ)ぐに道を以(もっ)てす。
人臣(じんしん)(き)と富(とみ)を重んじ、
(き)と咎(とが)を悪(にく)まざる無(な)し。
(ひそか)に大尊(たいそん)を示して微(ひそ)かに重宝(じゅうほう)を輸(おく)り、
その豪傑(ごうけつ)を収(おさ)め、
(うち)に積(つ)むこと甚(はなは)だ厚(あつ)くして、
(そと)には乏(とぼ)しきを為(な)し、
(ひそか)に智士(ちし)を内(い)れ、その計(けい)を図(はか)らしめ、
勇士を内(い)れてその気を高からしむ。
富貴(ふうき)(はなは)だ足(た)り、常(つね)に繁滋(はんじ)あらば、徒党(ととう)(すで)に具(そな)わる。
これ これを塞(ふさ)ぐと謂(い)う。
国を有(たも)ちて塞(ふさ)がるれば、
(いずく)んぞ能(よ)く国を有(たも)たん。
・・・・・・
道理でもって敵国の前途を塞ぐ。
人材たるもの、地位と富を大事にし、
危険と罰を恐れない者はいない。
そういう敵国内の臣下たちに接近して高い地位と莫大な贈り物を秘密裡に送り付け、
突出した武人も買収してしまう。
ただし、
コチラは蓄えが大量にありながらも、
外から見ると貧乏に見せかける。
買収工作の過程でコチラの智慧者を敵国内の宮廷に潜入させて敵国の重要計画に参画させる。
さらに扇動がうまい人間を潜入させて敵国宮廷を勝気にさせる。
コチラが約束した地位と与えた財宝が充分で、
しかも頻繁に贈り物を絶やさなければ、
敵国内にコチラの徒党が出来上がったも同然。
これは敵国の前途を塞いだと言える。
国の中に国を作られて前途も塞がれれば、
どうして国を保っていられようか。

長えよ!
と言いたくなるぐらいに文伐十二節で一番長い長文、
そしてこれまでの文とどこが違うのかよく分からないコノ第十一節。
臣下を狙った買収工作と言えば、
第二節、第三節第五節、第六節、第七節でも語られており・・・。

明確な特徴とすれば、
もはや敵の王に賄賂を送ることの重要性よりも、
敵国崩壊後を見越しての如く敵の臣下を買収対象とすることで、
臣下という人材をピンポイントにした買収というよりも?
敵国の官僚機構そのものをミニマム状態にしてゴッソリ取っていくというものに近く。

最初に出てくる「道」については、
文師篇の人材と民衆をフルに活用する「道」と似たようものであり、
あの時の「道」も人がどういうものかということを道理として見ている面があり、
この第十一節では改めて人・・・特に人材がどんなものかということを語られ・・・。
人は利益を好み危険と罰は嫌う。
買収工作にコロっといくんだよねえ、
という前提で人を見、
それが道理とするのが六韜。

ちなみに、
買収工作の対象として文官を優先して武官を後回しにするととれる表現になっている上の文、
文官のほうが利益に転がりやすいという前提がココにあり、
義務教育もなければ教育の平準化も共通化なかった古代から中世にあっては、
文官となるに不可欠な文字を学ぶということがとても大変で、
多額の金が必要だし擬音も音読みも訓読みも全て漢字だけで全てを表現しようという文化だけに、
ものスゴイ難解なことに子供の頃から挑戦しなくてはならず苦労がいっぱい。
多額の投資と苦労の末に手に入れた文官というポストだけに、
はやいところペイしなくちゃあということで金を平然と受け取って自分のフトコロに溜め込むわけで、
買収が大変やりやすい・・・。
それは孔子をはじめとする儒学が学びやすい教材を揃えて改善されるかと思われたら今度は科挙という制度がその事情をさらに加速させるも、それは六韜の範疇外のお話。

対するに古代から中世の武官はというと、
とかく戦場で生存することが出世の糸口であり、
戦場にあっては部下を維持するためにあれこれと必要なものについて出費を強いられることもあり、
もらったものの大部分は他の将校兵士に渡してしまいフトコロに残らないのが常。
近代以降の軍ならいざ知らず、
大将格ですら普通に命を落とすような浮き沈みジェットコースターな古代・中世。
感謝はすれども言いなりになるかと言えばちょっと難しく。

フトコロに残りやすいか否か、
そして生存率の低さでもって、
武官は今一つ買収工作をするに効率が悪く、
下手をすれば軍が有する情報網と後方機関にカウンターを食らう可能性すらあり・・・。
なので、
武官の買収対象は「豪傑」。
よく目立つ上になかなか死なないし死なせられない存在で、
本人の力量以上に多くのものを背負わされている人物に限る。
久々に挙げます曹操主人公の三国志「蒼天航路」では、
袁尚との戦いの前に曹操に近い将軍たち全員に買収工作が仕掛けられてたりと、
狙いどころは基本有名どころ。
日本の戦国時代でも色んな戦国武将の下に外交も兼ねさせていたこともあって敵と通じていた家臣がいたとしきりに言われたりで。

贈り物をする過程で、
コチラの人材も少しずつ浸透させてもらう。
最終的には国家の重要事業にまで参画できるようなところまで潜入させる。
コノ潜入レベルについては、
潜入させた人間を敵国中枢の重要計画に直接近づけるというよりも、
買収した人間を出世させてその人間をサポートする形で口を出せるようにする。
その段階で重要になるのが気付け薬のように気分をアゲアゲにする人間も浸透させることで、
そうやってコチラが買収した人間を次々と出世させていく。

買収対象のネットワークが出来て、
軍の有名どころも買収できて、
買収した連中は今所属している国が崩壊してもコチラにより高い地位で採用されると思っている。
自国崩壊がさらなるキャリアアップという認識を持つ集団がいるということは、
敵国内にコチラの国が既に出来上がったも同然。
そんな状態では敵国の王は国の形を保ち続けることは出来ないだろう・・・。

モチロン、
敵国の王にも賄賂や美女を送って政治に興味を持たせないようにするのは当然のことでもあり、
第十一節は、
コチラの財力が敵国内部に広く浸透できるぐらいに上がった時に達成できる最終段階みたいな扱いでもあり・・・。

そして最後、
文伐篇4 第十二節 ・・・
・・・・・・
その乱臣(らんしん)を養(やしな)いて以(もっ)てこれを迷(まよ)わし、
美女淫声(びじょいんせい)を進めて以てこれを惑(まど)わし、
良き犬馬(けんば)を遣(おく)りて以てこれを労(つか)らす。
(とき)に大勢(たいせい)を与(あた)えて以てこれを誘(いざな)い、
(かみ)(さっ)して天下と与(とも)に図(はか)る。
・・・・・・
敵国内のロクデモナイ臣下を支援して敵国の王の判断を狂わせ、
美女とヨカラヌ遊びでもって敵国の王から判断力を奪い、
熱中できるものを献上して敵国の王の集中力を奪う。
時として大きな利益をチラつかせてそちらに走らせ、
好機到来と思えば人材を使い民衆を扇動して敵国を滅ぼす。

コチラもこれまであった買収工作にハニトラやらなにやらの言で。
前にあったことをそのまんま繰り返しているようで。

「乱臣」と言えば、
第五節であったように、
遠巻きに敵国の人事考課をコントロールして能力のある忠臣を左遷させ、
そうでもない者を出世させる時に、
とりわけ能力のない者を出世させた時に作れる存在でもあり、
その臣下をひたすら支援して出世させて敵の王の近くにまで近づけ、
臣下をパイプとして色んな誘惑多いものを敵の王に献上する・・・。
それは第四節の美女、
ちなみに犬馬については、
馬の中でも駿馬は古代から中世まで大陸中華ではとかく宝扱いになり、
三十六計混戦の計仮道伐虢(カドウバッカク)において、
虞王に送られた財宝の一つが駿馬だったとされ、
さらには貴族同士の賭博の定番が馬を持ち寄っての競馬でもあったので、
やり始めるとまあ楽しくなる。
ちなみに犬につきましては・・・確かあの大陸では美食の一つだったっけ?

そうやって政治に集中できないようにして、
時おり大事をやらせる、
「大勢」というのは軍事行動であり、
モチロンそれがコチラに向かないようにする・・・。
そしてその軍事行動でもって、
失敗すれば敵国の王の威信は傷付き、
成功しても内政がメチャメチャなだけに利益はない・・・。

以上で直接の武力によらぬ手法での敵国の内部崩壊を誘発させる、
文伐十二節は終了。

この十二節ででもって敵国の王への不満が忠臣から民衆まで浸透し、
国の衰退が外からも見て取れるようになった時・・・、
「十二節 備(そな)わりて、乃(すなわ)ち武事(ぶじ)を成(な)す」
始めて武力による最後のセレモニーが始まる。

次回は次の篇となります。


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