六韜 二巡目 『 目指すは簒奪併呑』 第18回 「文韜18、兵道篇1、独往独来」


六韜の二巡目、始めました。
まずは最初の文韜の最初から。

『六韜』二巡目
18回
文韜18 兵道篇1


今回から兵道篇になります。

兵道、兵の道、
戦争のやり方や勝ち方。
こういうし抽象的で範囲がデカイ話になると、
そんなに具体的な話がなかったりで。

兵道篇 抜粋・・・
聖王は兵を号して凶器となし、
(や)むを得ずしてこれを用う
・・・・・・
偉大な王は軍隊を凶器とみなし、
他に手段なしというやむを得ない時に軍隊を使う。

「兵は不祥の器」という老子の言葉をちょっと言い換えたこの名言。
字面だけなら極力使わないようにしましょう、
という意味合いになるのが日本ですが、
六韜には殷打倒を目的とした舞台設定があり、
そのためにあらゆるスパイを使って敵を内部から崩壊させるということも言われ、
「やむを得ずして」というのは、
敵を内部からグズグズの状態にしつつ暴発させて、
最後の最後でシメの一撃、
孫子三巡目のようなセレモニーとしての軍事行動という意味でもあり。

超高速機動・超短期決戦構想という概念を持っていた尉繚子にあっては、
利益を得ようとする戦いの時ほど嫌々やってますという調子でやれ。
という言葉もあったりで。

なかなか字面通りに、
なおかつ日本的な平和感覚で取ると、
意味合いが全く違うものになったりで。

この名言は兵道篇に出てくる言葉ですが、
前後のつながりが唐突に出てくるので、
先に取り上げました・・・。

兵道篇は文韜の最後の篇になり、
これまで文王が質問してましたが、
なぜかココで次代の武王が質問しております。
「兵道(へいどう)は奈何(いかん)
用兵の道はいかなるものか。

ココで太公望はこう語ります。
兵道篇 抜粋1・・・
太公(たいこう)(いわ)く、
「凡(およ)そ兵の道は一(いつ)に過ぎたるは莫(な)し。
 一(いつ)とは能(よ)く独(ひと)り往(い)り独(ひと)り来(き)たるなり。
 これを用(もち)うるは機(き)に在(あ)り、
 これを顕(あらわ)すは勢(せい)に在り、
 これを成(な)すは君に在り」
・・・・・・
兵の道は「一」より良いものはない。
「一」が守られれば進軍する時も引き上げる時もひとまとまりでいられる。
軍隊を用いる時には戦機が大事であり、
ハッキリと動員を決める時には情勢と準備が大事であり、
成功するかどうかはひとえに王の実力にかかっている。

全軍ひとまとまりで行動し、
出撃も撤退もさながら一人の兵士が去る如く、
コチラは尉繚子でも「独出独入」という表現で説明され、
近代以前、
後方からの補給は敵の妨害の有無に関係なく基本途絶えるのがデフォ、
補給の大部分は現地調達当たり前、
兵力は大きくなればなるほどにリスクが大きくなる。
という古代から中世の時代にあっては、
兵力の集中と機動を両立させる最高峰の原則。

新帝国建設を前提としても読める尉繚子にあっては、
徹底した重罰主義でもってそういったことが出来る軍隊を作り上げる、
という話だったので、
極めて長い時間と手間と金が必要で。

軍隊そのものの形成に莫大な予算と手間が必要な以上、
それは統治政策と統治機構に密接にかかわることであり、

超高速機動・超短期決戦という金をあまりかけないことを前提としているものの、
それでもその軍隊を動員すればかなりの金や物資が消費される。
もしも事情が変わって戦いが長期化すれば、
第二次世界大戦でソ連相手にスターリングラードが転換点となってしまったドイツ軍のように、
軍の構想からしてかえって大きな損害を被ることになる・・・。

背後に大帝国という力があることを前提とした尉繚子と違い、
戦いで強大な敵を倒して呑み込むことを前提としている六韜とでは、
これまた想定している長期化による損害は全く別次元のものになる。

ゆえに、
六韜では戦機と情勢をよく見定めてから仕掛けなくてはならないということで、
情勢はもちろん流れを読むということ以上に情報戦で自分達で作るということ・・・。

「成すは君にあり」という、
統治政策から軍隊創設、
戦争の人材の獲得、
王様が直接というわけではなくても方向を示す等やることはとても多い。
それはこれから強大な敵を倒そうとしている舞台設定の時期のみならず、
太平の世となっても常に必要なことで。
立場逆転となり自分達の王朝を破壊しようとする勢力が出現した時にはそれまでの政策の蓄積が物を言う・・・。

そこから六韜内では舞台設定に忠実に、
いかに殷の紂王がダメダメかという話になり、
妲己にいいようにもてあそばれて、
好き放題にやりまくり今を楽しむことに専念し過ぎていて、
軍隊を集中動員できなくなっており、
有事を乗り越えるだけの力が殷王朝になくなっている・・・。


兵道篇、
次回も続きます。


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